第16章

「全然記憶喪失なんかじゃないでしょう?藤原美佳、証人もあなたが用意したんでしょ!」樋口浅子はやや取り乱した様子だった。

「浅子お姉さん、何を言ってるの?私たちの言い争いを目撃した人がいるじゃない?私はただ樋口姉さんに素直に謝ってほしいだけなのに」

藤原美佳は怯えたように相澤裕樹の背後に隠れ、相澤裕樹は一歩前に出て樋口浅子の鋭い視線を遮った。

「樋口浅子、美佳ちゃんを怖がらせないでくれ。もうこうなった以上、大人しく警察の調査に協力しろ」

樋口浅子の胸が痛みに締め付けられた。

相澤裕樹が藤原美佳を愛していることは知っていたが、ここまで盲目だとは思わなかった。

「ディン」という音と共に...

ログインして続きを読む